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光のもとでU+

迷路の出口

Side 藤宮雅 14話

 朝食の間、私は右隣に座る桃華さんと話すことが多かった。
 翠葉さんも桃華さんも会話のときには人の目を見て話す子たちだけど、今日の桃華さんは一味違う。朝食の席に着いてからというもの、食い入るように私の顔を観察している。
 何かしら……。肌のコンディションはそこまで悪くなかったはずだし、一通りメイクだってしている。
 もしかして、口の周りに何かついてるっ!?
 慌てて口の周りを手で触れて確認したけれど、これといったものはついていなかった。じゃあ、何……? 歯に海苔っ――って、朝食は洋食なのだから、海苔のように歯に付着するようなものは何もない。
 思い当たるものは何もないというのに、桃華さんの視線が張り付いているのは明らかなのだ。
 このままでは落ち着いてご飯を食べられないし、いっそのこと訊ねてみようかしら……。
 思い切って桃華さんへ向き直ると、私と同じくらい緊張した面持ちの桃華さんが口を開いた。
「雅さん、メイクって難しいですかっ?」
「え……?」
 メイ、ク……? ……メイクって、お化粧のこと、よね……?
 桃華さんは興味津々、といった顔で返答を待っている。
 メイク……メイク……メイク……。なるほど、メイクか……。
 桃華さんが注視していたのは「私の顔」というわけではなく、「メイクを施された顔」だったのだ。
 納得した私は桃華さんの肌に目を向ける。しかし、メイクというメイクは何もされていないように見えた。
 桃華さんは翠葉さんと同学年――つまりは高校三年生。年頃的に、メイクに興味を持ってもおかしくない年齢と言える。
 そこまで考えてから、
「メイクは慣れ、かしらね? 桃華さんも大学生になればメイクするようになるだろうし、あっという間に慣れると思うわ」
「そうなんですね……。雅さんはどなたかにメイクを教わったんですか?」
「えっ?」
「独学ですか?」
「……そうね、誰かに教わったと言うなら、デパートのビューティーアドバイザーかしら?」
「あっ、販売員さんっ!?」
「えぇ。誰よりも商品の特性をわかっているし、正しいメイク方法を教えていただけるから、雑誌を見ながら独学でやるよりも確実よ」
「そうなんですね……。でも、デパートのコスメカウンターは敷居が高く感じてしまって……」
 それは年齢によるところが大きい気がする。そもそも若い子は素肌がきれいだから、高機能を備えたデパコスに頼る必要はない。桃華さんほど肌がきれいなら、成分にさえ気を付けてものを選べばドラッグコスメで十分対応できるだろう。
 本当なら、身近な人に教えてもらうのが一番だと思うのだけど……。
 さすがに昨日知り合ったばかりの桃華さんの家庭環境まで知りはしない。私は少し探りを入れるように、
「桃華さんはお休みの日にメイクをすることはないの?」
「家の用事で出掛けるときにはパウダーをはたいて薄く紅を引く程度のことはしますが、きちんとファンデーションを塗ったり、アイメイクをしたことはなくて……」
 なるほど……。
 これはもしかしたら、身近にメイクを教えてくれる人はいないのかもしれない。
 血のつながった親子だからといって、何もかもを話せる関係であるとは言い切れないし……。
 そっと桃華さんに視線を戻せば、桃華さんの肌は黄味寄りのイエローベースだった。肌色の系統は私と同じ。さらには、肌のトーンもさして変わらない。それなら――
「あとでメイクしてみる?」
「えっ? でも、私日焼け止めしか持ってきてませんっ」
 落ち着いた印象の桃華さんが目に見えて慌てていて、そんな様がかわいらしく思えた。
「そんなに慌てなくても大丈夫」
 私は自然と表情が緩むのを感じる。
「私と桃華さんは肌色の系統が同じだし、トーンもほとんど変わらないわ。私が普段使っているものを代用しても問題ないと思うの」
 リキッドファンデーションを薄めにつけて、ピンク系のアイシャドウとチーク、リップを乗せる程度なら、ナチュラルメイクでくどくはならないだろう。でも、桃華さんはアイメイクにに興味があるみたいだから、マスカラはさせてあげたほうがいいかもしれない。
 そんな算段を立てていると、
「じゃ、午前は男女で分かれようか? 俺たちはサバゲーしない?」
 秋斗さんの言葉に、蔵元さんが面倒臭そうに顔を背ける。それとは逆に、唯くんは威勢よく手をあげた。
「するするー! 俺、サバゲーの実践は初めて! 超楽しみ!」
「そう言われてみると、俺もサバイバルゲームはしたことないなぁ……。初心者でもできるものなんですか?」
 蒼樹さんが訊ねると、
「平気平気! 自陣と敵陣に旗立てて、それを先に奪取したほうが勝ちっていう簡単なゲームだから。さらには好きなエアガン持って、敵にペイント弾を当てたら、食らった人間は戦力外になる」
「先輩、ルールはともかく、俺が心配してるのそこじゃないんですけど」
「へ……?」
「エアガンって、初心者が打っても簡単に当たるものなのかって話です」
「あー……なるほど。それなら先に射撃練習させてあげるよ。一時間も打ってれば慣れるだろ?」
 あっけらかんと話す秋斗さんを、三人は胡散臭そうなものを見る目で見ている。その際たる人間
――蔵元さんの肩に腕を回した秋斗さんは、
「蔵元もやるだろ? 俺の子守は蔵元にしかできないもんな?」
 決して悪びれることなく口にする秋斗さんを、蔵元さんはひどく煙たそうに見てはため息をついた。
「……では、私を秋斗様と敵対するチームの長に任命してください」
「俺の敵……?」
「えぇ。全力で秋斗様をぶっ潰しにいきましょう?」
 ニヤリ、と蔵元さんが笑みを浮かべると、
「それいいね!」
「それ、いいですね!」
 すぐに唯くんと蒼樹さんが賛同し、瞬く間に秋斗さんは孤立してしまった。
 蔵元さんの肩に回していた腕も軽く払われ、秋斗さんはきょとんとしている。
「もともと五対五くらいでやろうと思ってたから、警護班も巻き込むつもりだったけど……。なんだよ、こっち、俺以外全員警護班?」
「何か問題でも?」
 蔵元さんが真顔で訊ねると、
「別に〜? 蔵元たちがそれでいいなら俺はかまわないよ?」
 秋斗さんは寂しがる素振りは見せず、にっこりと笑って余裕そうに構えていた。でもそれは、見えただけで本当は――「強がり」だったのかしら……?

 食後、私と桃華さんは私に与えられた部屋にいた。
 ドレッサーはベッドの右側、つまり出入り口のあるドア側に設置されており、自然光は届かない。
「窓際へ移動しましょうか」
「え? どうしてですか?」
「ドレッサーにも照明はついているけれど、自然光のもとでメイクするほうが厚塗りにならなくていいのよ」
 そんな豆知識を与えつつ、場所を移動する。
 窓際のテーブルセットに着くと、桃華さんに陽の当たる場所を譲った。
「そうねぇ……。まずは洗顔からかしら」
「え? そこから?」
「えぇ、メイクはきれいな肌――基礎化粧品で整えた直後にするのが一番きれいに仕上がるの」
 そう言って桃華さんに洗顔を勧めると、桃華さんは従順に洗顔を済ませてきた。
 私の基礎化粧品を使ってスキンケアを終えると、
「普通はね、下地を付けてからファンデーションを塗るの。でも、今日みたいにオフの日ならば、普段よりは少し軽い付け心地を選びたくもなるし、隙のないメイクをする必要もないでしょう?」
「はい……」
「そういうときは、下地とファンデーションを少しずつ出して、手の甲で混ぜてから肌に乗せるといいわ。薄付きでも、肌をきれいに見せてくれるから。こういう使い方ができるのがリキッドファンデーション。クリームファンデーションはテクスチャーによっては下地とうまく混ざらないことがあるの。パウダーファンデーションは扱いが楽だし、化粧直しには必要になるのだけど、ベースとなるメイクに勧めるのはリキッドファンデーションね。今は汗や皮脂で崩れにくいタイプも数多く出てるから、メイク崩れを気にする必要もないわ」
 桃華さんの手の甲に下地とリキッドファンデーションを出してあげると、それを中指で混ぜるよう促す。
「ファンデーションと下地が完全に混ざって、肌と同じくらいの温度になったら付け時。雑誌やビューティーアドバイザーは五点置きといって、額、鼻、両頬、顎にファンデーションを均等に置いて、そこから伸ばす方法を勧めているけれど、私はそこだけ違うの。額から伸ばして、次に頬。頬に伸ばしたものがあまったもので瞼や目の周り、さらには鼻。最後に残ったファンデーションで口周りや顎を塗るわ。均一に伸ばすという意味ならば、五点置きがいいのだと思うけれど、目の周りや口周りは表情によって皮膚が動くでしょう? そういう場所は薄付きのほうがメイク崩れが少ないのよ」
 桃華さんは私の言うことを聞きながら、少しずつファンデーションを肌に乗せ、伸ばし始めた。
 あぁ、きれいな肌……。ファンデーションなんて必要ないくらいには、きれいな肌だわ。
 それこそ、パウダーをはたいてチークを乗せて、ポイントメイクだけすればいいんじゃないかしら。
 そうは思うけど、大学生とは社会へ出る前の準備期間とも言える。メイクを覚え、TPOに合わせたメイクを学ぶことを念頭に置くならば、やはり基本的なことはすべて教えるべきだろう。
「わぁ……。肌の色が均等になりました!」
「えぇ、きれいに塗れたわね。そしたらルースパウダーで仕上げましょう。パウダーにはいくつか種類があって、ゴールドやシルバー、ピンク系、ブルー系のラメを含むものがあるわ。それから、ラメを一切含まないパウダー。ラメを含まないパウダーで仕上げると、比較的マット――陶器肌と言われるような仕上がりになるし、ラメを含むパウダーで仕上げると、ツヤ肌っぽくなるわ」
「パウダーにも色々あるんですね……」
「えぇ、そこはTPOをわきまえてチョイスするのが無難ね。パーティーに出席するなら華やかさを演出するためにラメが入ってるタイプを選ぶほうがいいだろうし……。とはいえ、ものに寄るところが大きいの。ラメの粒子が大きく目立つパウダーもあれば、ラメの粒子が細かくて控えめなパウダーもある。そこはものを見て、実際にパウダーの状態を見て選ぶほうがいいと思うわ。今日はどうする? 私はそこまでのツヤ肌は好まないから、控えめのラメが入ったものと、ラメが入ってないタイプの二種類しか持っていないのだけど……」
 実際にパウダーを出して見せ、パウダーの違いを見せるために手の甲に付けて見せる。と、
「陶器肌も捨てがたいんですけど、今日はラメ入りのパウダーを付けてみようかな? キラキラした粒子がとっても細かくて、仕上がりも上品に見えそう……。ちなみに、今日の雅さんは――ラメ入りですね?」
「正解! じゃ、こっちのパウダーね。パウダーはブラシで乗せる方法とパフで押さえる方法があるわ。どちらにするかは仕上がりの好みかしら。今回は、半分をブラシで、半分をパフで仕上げてみましょう」
 それぞれのコツを教えながらベースメイクを終えると、
「私はパフのほうが好きかもしれません。こういう肌、なんて言うんでしたっけ……」
 桃華さんは慣れないメイクの用語を思い出そうとしている。
 でも、仕上がりを表現する言葉などそう多くはない。大きく分けて、マット、セミマット、ツヤ肌――この三つくらいなもの。そして、今使ったパウダーの仕上がり的には――
「セミマット?」
 訊ねてみると、桃華さんの顔がぱぁっと明るくなった。
「そう、それです! パフで押さえたほうがきちんと感がある気がします。ブラシのほうはふわふわした感じで、どちらかというと、デートの日にしたい感じ!」
 弾けんばかりの笑顔で言われ、気付けば私は笑みが零れていた。
 まだメイクを習っている段階で、まったく詳しくはないはずなのに、すでにTPOをわきまえた取捨選択をしてみせる。なのに、「デート」を意識した彼女は等身大の高校生で、恋をしている女の子でしかない。
 好きな人のためにするメイクとは、どんな気分になるものだろう……。
 そんなことを考えつつ、コスメポーチからいくつかのパレットを取りだす。
「ベースメイクができたらチークやアイシャドウを乗せるのだけど、色味はどうする? ブルー系もあるし、ピンク系もあるわよ? マメ知識として教えるならば、チークの色味とアイシャドウの色味を揃えてあげることで統一感が出るし、ナチュラルに仕上がるわ」
 桃華さんは悩んでいるようだった。
「雅さんのさっきのお話をベースに考えるなら、きちんと見せたいときはブルー系。オフならピンク?」
「あくまでも私の考えだけれど、仕事のときはブルー系を選ぶことが多いわね。ほかにもブラウン系を選ぶこともあるわ。ブラウンは簡単に陰影を作れるし、意外と万能色なの。あとは洋服の色に合わせたり……?」
 桃華さんは私の顔をじっと見ると、
「今日はピンク系ですね?」
「えぇ、今日はオフだから。それに、ワンピースにローズカラーが使われていたから、それに合わせたの」
「私のワンピースはネイビーだからブルー系もありだけど……。初めてのメイクだし、ナチュラルを目指すとしたらピンクでしょうか?」
「そうね。じゃ、ピンクで仕上げましょう」
 チークと同系色のアイシャドウを出すと、桃華さんは目をキラキラと輝かせ、パレットに釘付けになっていた。
「チークはブラシでふわっと乗せる感じ。頬の高い位置に乗せるとかわいらしい印象になるし、頬骨に沿ってオレンジやブラウン系のチークを入れるとシャープな印象になるわ。ブラシに取ったチークは、一度ティッシュで軽く落としてから付けると、付けすぎちゃった、っていう失敗を避けられるわ」
 今日の私は頬の高い位置にチークを入れている。それを見た桃華さんはブラシを手に取ると、言われたとおりにティッシュで軽くオフしてから頬に乗せた。
「わっ! ぱっと血色が生まれますね!?」
「えぇ。チークがあるのとないのじゃ雲泥の差ね」
 クスクスと笑いながらメイクを続ける。アイシャドウパレットを開けると、ピンクのグラデーションになっているそれらを見て、
「チークに合わせるとしたら、このあたりですかね……?」
「そうね。あとはチークをアイシャドウにしてしまうこともあるのよ」
 そんな話を桃華さんは真面目な顔をして聞いていた。
「でも今日は、ハイライトにこの淡いピンクのパール系を使って、桃の花のような色味を二重瞼に乗せるのがいいかしら。目尻に少し濃い目のピンクを持ってきてあげたら締め色になるわね」
 私はメモ帳を取りだし、簡単に目の絵を描くと、どの部分にどういったアイシャドウを乗せるのかを描き込んでいく。桃華さんはそれを見て、アイシャドウパレットへブラシを向けた。
「ブラシにパウダーを取ったときは、どんな場合でも一度ティッシュで馴染ませてから肌に乗せてね?」
「はい!」
 桃華さんは実に優秀な生徒だった。ほぼほぼイラストどおりにメイクを仕上げ、今は鏡に映る自分の目元を興味深そうにじっくりと見分している。
 私は先ほどのイラストに鼻を描き足し、ノーズシャドウの入れ方をレクチャーする。
「眉頭から目頭にかけて、アイブロウで色味を作って指でポンポンって乗せるの。あまり濃い色にするとわざとらしくなるから、肌よりワントーン暗い色味に調整してね? そしたら、さっきハイライトに使ったアイシャドウで鼻筋の半ばくらいまで、同じく指でポンポンって乗せればノウズシャドウとハイライトの完成」
「わぁ、鼻がすっきりして見えるし、鼻が少し高くなった気がします!」
「メイクって便利よね?」
 そんな話をしてはふたり笑った。
 今まで、人とメイクの話をしたこともなければ、こんなふうに教えることもなかった。
 それを思えば、今、私はとても貴重な体験をしているのだろう。
「さ、最後はマスカラね!」
「マスカラは楽しみなんですけど、ものすごく緊張します……。友達も、マスカラが一番難しいって言っていたので……」
「そうねぇ……。確かに難関ではあるわね。でも、これも慣れよ。いくつかのポイントを押さえれば、そんなに難しいものでもないわ」
 まずはビューラーで睫を上げるよう話すと、桃華さんはものすごく緊張しているのが見てとれた。
「これっ、瞼挟んじゃいそうですっ」
「大丈夫だから、ゆっくりやってみて? 三段階くらいに分けてギュッギュッギュってやると、きれいにカールアップされるから」
「挟んだら睫抜けちゃいそう……」
「ま、そういうこともあるわね。ほかにも、ホットビューラーっていう手もあるし、そちらのほうが簡単ではあるのだけど、私は好んでアナログビューラーを使っているわ」
「理由は?」
「とくにないわね」
 そんな会話に桃華さんは笑う。
 なんとかビューラーで睫が上がると、ラスボスであるマスカラの出番だ。
「マスカラはブラシになっているタイプとコームになっているタイプがあるのだけど、私はコームのほうが使いやすく感じるから、コームタイプを使っているの。これもね、たっぷり付けたら必ずティッシュオフしてね」
「えっ!? せっかくたっぷり付けたのにティッシュで取っちゃうんですか?」
「もったいないって思った?」
「はい……」
「でもね、そのほうがきれいに付くの。ダマにならないし、べったりつくこともない。マスカラは睫がほんの少し太く、ほんの少し長く見えるように付けるのがベスト。こってこてなメイクを好む人は別として、桃華さんは自然に美しく見えるように仕上げたいのでしょう?」
「はい」
「なら、ティッシュオフは必須よ」
 桃華さんは納得してくれた。
「桃華さんは右利きね? だとしたら、左目の上睫からつけるのがいいと思うわ。下方に鏡をセッティングして、下を向いた状態でつけるの。左上が終わったら右上。塗ったあとは極力瞬きを我慢して? じゃないと、上瞼に付いちゃうから」
 桃華さんは手先が器用ならしく、初めてにしてはかなり上手にマスカラを塗っていった。
 でも、慣れないマスカラに瞬きをしてしまい、上瞼に黒いマスカラが付いてしまう。
「……さすがは難関。見事に敗北しました……」
 項垂れる桃華さんに、クレンジング成分のついた綿棒を差し出す。
「大丈夫。世の中には便利なものが普及しているの。女子の味方、クレンジング綿棒よ! マスカラが乾いたら、これで付いてしまったマスカラだけ取って、アイシャドウを軽く馴染ませれば元通り!」
「きゃーーー! そんなすてきなアイテムがあるなんて!」
 こんな調子で始終楽しくメイクをして過ごした。
「最後はアイライナーなのだけど、私的にはマスカラよりよっぽど性質の悪い難関だと思うわ。でも、きっちりメイクをするのでなければ、アイブロウペンシルで目尻を少し書き足せばいいと思うの」
 桃華さんは言われたとおり、目尻に少しだけラインを書き足した。
「桃華さん、眉はきれいにケアしてるのね?」
「あ、はい。高校に上がったときに行きつけの美容院で店員さんが眉のケアをしてくれて、やり方も教えてくださったので、眉だけはお手入れの仕方を知っていたんです」
「そうだったのね。とてもきれいに手入れをされていて、眉を書き足す必要もないくらい。ただ、アイブロウで色味を揃えてあげるといいかもしれないわね。ブラウンと淡いブラウンを合わせてブラシに取ったら、眉毛に軽く馴染ませてみて?」
 桃華さんは整った眉にアイブロウを馴染ませる。と、全体的な色味が整った、ナチュラルメイクが完成した。
「自分じゃないみたい!」
「写真、撮る?」
「それなら、一緒に写ってください!」
 私は桃華さんに請われ、ふたりで写真に写った。
 桃華さんから送られてきた画像を開くと、恥ずかしそうに笑う桃華さんと、少し表情の硬い自分がディスプレイに表示されていた。


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Update:2021/01/06

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