Twins〜恋愛奮闘記〜 2nd Season

春休みの過ごし方 Side 聖 03話

『じゃぁ、俺からもこれ』
 先ほど一緒に選んで買った帽子が入った包みを渡す。
 どんな帽子かはすでに知っているので、もしかしたらその場では包みを開けないかもしれないと思った。
 けれど、彼女は嬉しそうに袋を開けてみせる。
 すると、もうひとつの包みに気づいたようで、帽子ではなくそちらの包みを手に取った。
 包みを開けると、
『かわいい……』
『良かった……絶対に似合うとは思ってたんだけど、アクセサリーなんて初めて買うし、ましてやピアスでしょ? 大きさとかどうなのかなって思ったんだけど、そこは正直に自分の好みで選ばせていただきまし――』
『聖ありがとう! すごく、すごく嬉しい!』
 レイさんの突飛な行動にはだいぶ慣れてきた。でも、身を乗り出して抱きつかれたうえに、頬にキスまでされるとなると純粋な日本人である俺はうろたえる。
 商売大繁盛、の勢いで周りの視線も集る。そんなことを気にも留めずに、レイさんはピアスを見て嬉しそうにはしゃいでいた。
 びっくりはする。でも、そんな彼女を見て嬉しくないわけがない。
 うん、やっぱり俺はまだこのデートで十分楽しめそうだ。
『気に入ってもらえて良かった』
『すごくかわいい……何よりも、聖がピアスを選んでくれたのが嬉しかった。本当にありがとう』
『今度つけてきてね』
『もちろん! っていうか、今つけるわ!』
 レイさんは器用にピアスを外すと、また器用にピアスを取り付ける。
 ピアスを付けるとき、顔を少し傾けると彼女の髪がさらりと動く。
 待ち合わせたときには毛先がくるんとしていたのもの、今は見事なストレート。
 両方付け終わると、「どうっ!?」と両耳を出して俺に見せる。
 そんなところもまたかわいい。今日はきれいなレイさんというよりはかわいいレイさんだな。
『似合ってる』
 そう答えると、彼女は嬉しそうに目を細めた。

 カフェを出れば真っ直ぐにレイさんを送り届ける。そしてきっと柊と一緒に帰ることになるだろう。
 今日も今日とておうちデート。何か進展はあったのだろうか……。
 最寄り駅に着き改札を出ると、
「そういえば、今日柊は……?」
「今日もおうちデートって聞いてるけど?」
「そう……。放置されてなければいいけど」
「放置?」
「今、RPGにはまっちゃっててね……」
「それ、柊から聞いて半信半疑だったんだけど……」
「あら、ルイは結構やるわよ」
 柊が嘘を言っているとは思わなかったけど、まさかおうちデートでそれはないだろう……という気持ちが大きかったというかなんというか……。
 しかも、話に聞くと柊はゲームを一緒にするでもなくビリーとキャリーと遊ぶかゲームをしている立川を見てるだけだというのだから理解に苦しむ。
 いや、俺様な立川らしいといえば立川らしいのだけども……。
「……やっぱイメージできないな」
 あのうるさい柊を放置できることが……。俺が立川なら間違いなく根を上げるに違いない。
 立川、まさか耳栓とかしてないよな? 
「そう? 帰りに見てみるといいわ。恐ろしいくらいに粗大ごみだから」
「え?」
「動かないのよ。自然に呼ばれない限りはびた一文も動かない。だから粗大ごみ」
「なるほど……」
 レイさんはレイさんで、俺とは別の趣旨で話を進めていたらしい。
「まぁ、ビリーとキャリーがいるから大丈夫かな。仲間だと思われてるくらいだしね」
 むしろその二頭がいなかったら立川がゲームに専念できるわけがない……と思う。
 立川に放置され、二頭とじゃれる柊が目に浮かぶ。
「あははは! それは言い得て妙ね。うまいわ」
 レイさんは豪快に笑った。

 そんな話をしていればカフェ兼自宅に到着。
 カランカランと音の鳴る扉を開け中へ入ると、マスターがコーヒーの香りと共に穏やかな表情で迎えてくれる。
「ただいま」
「こんばんは」
「おかえり」
 このやり取りももう数回目。
 帰ってくるとマスターがコーヒーを淹れてくれ、それを持って上の居住空間へ移動するのだ。
 立川家に上がると、
「ね?」
「うん……」
 立川と柊を視界に認め、ふたりクスクスと笑いながらダイニングの席に落ち着く。
「そこに居座ってる粗大ゴミ。こうなると、そのゲームクリアするまで口利かないわよ? 柊、今からでも遅くはないわ。ほかの男に乗り換えたら?」
 レイさんの言葉に柊がむくれる。
「ぶーぶーぶー。それができたら苦労しないもんっ」
「でも、この先ルイが変わるなんて一パーセントもあり得ないわよ?」
「そーれーでーもーですっ」
「そ、まぁがんばって」
 と、彼女が席を立ったことで場所移動を察する。
 レイさんに続いて立ち上がると、
「仲良くて羨ましい〜……」
 という、柊の声が背中に貼り付いた。
 柊、話なら帰りにいっぱい聞くから。もう少しレイさんとふたりでいさせて?
 そうだな、とりあえずこのコーヒーを飲み終えるまでは。
 レイさんが自室に入ると、プレゼントされたスカーフを取り出し、彼女に歩み寄る。
「じゃ、これの巻き方をレクチャーしてもらおうかな?」
 近すぎる距離にレイさんが少しかまえ、そんなかわいい彼女の唇にキスをした。



Update:2014/04/12



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