【166666】 設定内容


1 誰視点 → 御園生翠葉

2 カップリング → 御園生翠葉 × 藤宮司

3 設定 → 婚約の挨拶に御園生家に来た司っちに唯ちゃんが、「俺に料理対決で勝てなきゃリィとの
       結婚は認めない〜」 と勝負を挑む。
       審査員は御園生家、藤宮司家、静さん、神崎夫妻、相馬先生、秋斗さん、海斗くん、
       朗元さん(収集のつく範囲で)
       できればお題は身体に良い料理(特に翠葉さんのために)
       最後ちょっとお疲れ気味の司っちにキス魔司が降臨するといいなぁ。

★ 本編とは一切関係のないパラレルストーリーであることをご了承の上、お読みくださいますよう
  お願い申し上げます。
  本編のイメージが崩れる恐れがありますので、読むか読まないかは読者様のご判断にお任せいたします。

  注)読んだ後のクレーム等はご遠慮ください。

2012/08/02(改稿:2012/10/16)

 料理対決 01 − Side 御園生翠葉 −


 今年の春、ツカサは大学を卒業する。就職先は藤宮病院。ツカサの夢がひとつ叶った。
 ここで“ひとつ”というのはツカサに言われたから。
「将来の夢、という意味なら“医者”になることがゴール地点かもしれない。けど、医者になって終りじゃないから」
 と。
 本当に学ぶべきことはこの先にあり、どんな医者になるのかがこれからの課題だと言う。常に高みを目指すところがツカサらしいと思いながら、その志を聞いていた。
 場所はウィステリアヴィレッジの十階。以前は湊先生名義だったこの部屋も、今はツカサ名義になっている。私たちはご飯を食べるときはリビングに移動するけど、たいていはこの部屋、ツカサが勉強部屋として使っている部屋で過ごすことが多かった。
「ところで、挨拶なんだけど……」
「え?」
「翠の実家に挨拶」
 言われてきょとんとしてしまう。
 今、ツカサの将来のビジョンを聞いていたはずだけど、どうして実家に挨拶という話しになるのだろうか。
「忘れてるわけじゃないだろうな?」
「何を?」
 訊いてすぐ、頭の中で警報が鳴り出す。ツカサの機嫌が悪くなる一歩手前。もしくは一歩踏み込んでしまったかもしれない。
「高校卒業するとき、プロポーズしたと思うんだけど……」
「……されました」
「大学卒業したら結婚するって話は覚えてないわけ? ……あぁ、覚えてないんだろうな。何をって訊き返すくらいには」
 爽やかすぎる笑顔に背筋が凍りそうになる。私は正直に謝った。
「ごめん……少し浮かれてたの」
「何に?」
「……大学生になって二年目から、ツカサはずっと支倉にいたでしょう? 卒業したら藤倉に、ここに帰ってくるんだなって思ったら、前みたいにいつでも会えるんだなって……」
「会う時間確保するために結婚するんじゃないの?」
 そうだった――藤倉に戻ってくるとはいえ、病院に勤めるようになれば会う時間は思うようにとれない。夜勤だなんだ、と近くにいるのにすれ違うことが多くなる。だから、大学卒業したらすぐに結婚、という話になっていたのだ。
「すぐに返事がないって何?」
「わ、ごめんっ」
「ごめんって謝られる意味がわからない。それは結婚やめるってこと?」
「違うっ、そうじゃなくてっ」
「なら何?」
「少し忘れてただけ。藤倉に帰ってくることに気を取られてただけ」
「へぇ……結婚のこと、“少し忘れてただけ”で済まそうとするとはいい度胸だな」
 笑みを浮かべたまま距離を詰められる。
「ここまできて反故にされるとは思ってないけど……」
「しないっ、反故になんてしないっ」
 焦って答える。
「むしろさせないけど……忘れてたことに対してお仕置きくらいはしていいと思う」
 ふたりの間の距離がなくなり、責めるような、攻め入るようなキスをされた。
 呼吸が上がってくるとキスをやめ、抱き寄せられる。
 私は、本当に目の前にツカサがいるんだな、と実感しながら広い背に腕を回す。
「忘れてたとか言うなよな……」
 少し拗ねたような物言いに、ごめん、と謝る。そして、
「おかえり。おかえりなさい」
 腕に力をこめて抱きついた。

 お茶を淹れなおして実家に電話をかける。“挨拶”の日取りを決めるために。
 お父さんもお母さんも驚きはしない。ツカサの高校卒業と同時に私たちは婚約をしたから。両者の家族が揃い、婚約をした日が懐かしい。もう6年近く前のことになる。
 日取りはすぐに決まった。次の土曜日。
 通話を切ってすぐのこと。唯兄から着信があった。
「唯兄?」
『ちょっと、司っちに代わってっ』
「え? あ、うん」
 私は携帯をツカサに渡す。
「唯兄が代わってって……」
 ツカサはものすごく面倒そうな顔をしたけれど、携帯を手にすれば敬語を発する。
「なんですか?」
『あんねぇっ、人の妹掻っ攫おうってんだから、俺よりも料理うまくなくちゃ認めねぇっ』
 携帯から唯兄の声が漏れ聞こえる。
 いつものツカサならサラリとかわしそうな内容だった。でも、ツカサは応じた。
「いいですよ」
『ふぅーん、ずいぶんと余裕じゃん』
「余裕というよりは面倒ですけど」
『相っ変わらずかわいくないっ!』
「かわいくなくて結構です」
『うーわっ。こんなのが義弟になるなんてやだやだやだやだっっっ』
 駄々をこねるような唯兄に、
「それはお互い様です。俺も唯さんみたいな義兄は遠慮願いたい」
『言ってくれるじゃないの……。とにかく勝負っ。リィが気に入る料理作ったほうが勝ちだかんねっ』
「はいはい」
 そのあたりは適当に受け流して通話を切った。切ったあと、鬼畜兄貴、とボソリと零す。
「どうして受けたの? これ、受けなくても普通に挨拶はできたと思うよ?」
 言うと、涼やかな目がこちらを向く。
「唯さんが本気で反対してるとは思ってない。ただ、こういうのが必要なんだろ?」
「え?」
「大切な妹掻っ攫われるわけだから、何か勝負でもしないと気が済まない。たぶん、そんなとこ。もともと面倒くさそうな人だったけど、本当に面倒くさい。その点、もっと騒ぐことになるかと思ってた御園生さんのほうが聞き分けがいい」
 ずいぶんな言われようだけど、私はなんだかおかしくなって笑ってしまう。
「蒼兄は桃華さんと結婚したときのこと思い出したんじゃないかな?」
「ああ、なるほどね……」
 蒼兄と桃華さんは二年前、桃華さんが大学卒業すると同時に結婚した。
 そのときのことを思い出していると、
「何が食べたい?」
 ツカサに訊かれる。
「なんでも。ツカサの作ってくれる料理はなんでも好き」
「それ、審査時に言ってくれないか?」
「うん? いいよ?」
「でも、唯兄の作ってくれる料理もなんでも好き、は言わないでほしいんだけど」
 じっと見られて、笑いがこみ上げる。
「大丈夫。ちゃんとツカサの味方する」
「当然だろ? でも、そうするとあの面倒な人が拗ねる、というかぐれることになるけど?」
「あとでフォローするから大丈夫」
 こんな普通の会話が嬉しくて、時間を気にせず一緒にいられることが嬉しくて、私はツカサにぴたりとくっついた。
「寄り添うだけじゃなくて……」
「え?」
「未来の義兄から料理対決とかわけわかんないもの挑まれてるかわいそうな婚約者に、応援のキスくらいあっていいんじゃない?」
 双眸に見つめられ、囚われ――私はそっとツカサにキスをする。
 唇が重なると、主導権はツカサに奪われた。


*****


 挨拶当日は料理対決当日でもあった。
 場所はウィステリアヴィレッジのゲストルーム。
 対決者ふたりは、あらかじめ下ごしらえをしたものをその場に持ち込んでいた。
「本来なら幸倉のご自宅にお伺いするべきだったのですが……」
「いいのよ、唯が言い出したことだし。それにこのゲストルームも今では御園生家だもの」
「そうそう。むしろ申し訳ない。本当はさ、ホテルでうまいものでも食べながら……って思ってたんだけど、唯が聞きそうになくって」
 お母さんもお父さんも苦笑い。
「あぁ、大丈夫です。面倒な人間が義兄になることはずいぶん前から覚悟してたので」
 ツカサは背後にいる唯兄に向ってサラリと言ってのけた。
「はっはぁぁん? 面倒な人間だぁ? 自分だって相当面倒な人間でしょー? 人のこと言えないでしょー?」
「唯さんには負けます」
 にこりと笑って返すところがツカサだな、と思った。
 人は徐々に集まってくる。ジャッジするのは私の両親と蒼兄と桃華さん。それから話を聞きつけた静さんと湊先生。
 料理はゲストルームと静さんの家のキッチンで作られる。
 理由は、どちらかが先に料理を作って食べさせると、だんだんおなかが膨れて、料理を後に出す人が不利になるから、というもの。
「そんなのジャンケンで決めなさいよ、面倒くさい」
 言ったのは湊先生。
 唯兄は断固として拒否した。
「やーでーすっ。1パーセントでも不利になる要素なんて欲しくないもんっ」
 ここまでくると正真正銘の駄々っ子のようだ。
 それを静さんが、
「ならうちのキッチンを使うといい。それなら同時に料理を出せるだろう?」
「じゃ、俺が上で作ります」
 これ以上の面倒はごめん、そんな顔でツカサが申し出たことにより、ツカサは静さんの家のキッチンで作ることになった。
「桃華嬢っ、見張りお願いねっ」
 唯兄が桃華さんに言うと、桃華さんはにこりと微笑む。
「任せてください。そういうのは得意なんです」
 私も一緒に行こうとしたら、唯兄に手をつかまれた。
「だーめっ。リィはこっちにいてっ」
「唯兄……」
 私が困っていると、ツカサが寄ってきて、
「こんなふうに駄々こねられるのもあと少しだから聞いてあげれば?」
「何っ、その俺が勝ちます、みたいな言い草っ」
「いや、勝つんで……。じゃ、ちょっと行ってくる」
 言い終わると同時、ツカサはこめかみに唇を寄せた。つまりはキス――。
 私が反応する前に、唯兄が「わーわーわーっっっ」と騒ぎ出す。“わー”が追加されるたびに自分の顔が熱くなる。
「ちょっと、碧さんっ、零樹さんっっっ。これっ」
 指を差して大騒ぎする。と、ガコン――お母さんの拳が唯兄の頭に落ちた。
「唯、うるさい。騒ぎすぎ。キスのひとつやふたつが何よ」
「えっ、零樹さんっ!? 奥さん、んなこと言ってますが?」
「……だって、俺ら6年前に婚約認めちゃってるもん。今さらでしょーが。婚約、即ち結婚の約束なわけで、俺ら司くんに翠葉が嫁ぐことなんてとっくに了承してるんだからさ」
「なんですってぇぇぇっっっ!? ちょっと、ここには俺の味方は誰もいないんじゃないのっ!?」
 テンション高すぎる唯兄は、コロッコロと表情を変える。それを見かねた蒼兄が、
「大丈夫大丈夫。ちゃんと唯の味方もいるから、な? ほら、俺と桃華は唯の味方」
 たしなめられて、ようやく唯兄はキッチンへと入って行った。

 上の階で料理しているツカサも気になれば、今日はどうしちゃったんだろう? というような唯兄も気になる。
 私が腰掛けたのは上の階につながる階段だった。隣に蒼兄が座る。
「気になる?」
「うん……唯兄、どうしちゃったんだろう?」
「別にどうもしないよ。ただ、かわいい妹を取られるのが癪なだけ」
「妹であることは変わらないのに?」
「んー、複雑なんじゃない?」
「蒼兄は?」
 訊くと、
「俺には桃華がいるからね」
 にこり、ととても幸せそうに笑った。



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