誰にも見せない絵 03 − Side 藤宮秋斗 −(性描写があります)
寝室でスーツを脱いでいるときに思いついた。ちょっとした悪戯を。
彼女が男物のシャツを着たところを見てみたい――少し考えただけでもそそられる。
彼女にコスプレをさせたことはない。いたってノーマルなことしかしてきてない。いきなりナース服はアレでも、白シャツくらいなら許されるんじゃなかろうか?
俺は自分のワードローブの中からアイロンのかかったシャツを手に取り、バスルームへと向った。
そっとドアをスライドさせ、パウダールームにある彼女のルームウェアとすり替える。できるだけ静かに行動していたつもりだけど、音に敏感な彼女には気付かれてしまった。
「秋斗さん……? どうかしましたか?」
バスルームから、反響した彼女の声が聞こえてくる。
「あぁ……俺も汗かいたから一緒に入ろうかと思って」
「えっ!?」
すごく動揺しているのがわかる。今、俺が入っていったらバスルームの先に逃げ場はないもんね?
「何? 待っててくれたの?」
「ち、違いますっ! だって秋斗さん、待っててくれるって……」
慌ててる彼女は滅法かわいい。けれど、見たいものがあるからね……。カモフラージュのためにからかうのはここまで。
「嘘だよ。洗濯物を洗濯機に入れに来ただけ。それと、多少汗をかいたから、濡れタオルで拭こうと思ってさ」
俺は棚に手を伸ばしタオルを取ると、洗面所でそれを濡らし絞った。ついでに、シャツや靴下などの洗濯物を洗濯機に放り込む。
パウダールームを出る間際、
「服はちゃんと着て出てきてね?」
と、念を押してみた。
「あっ、当たり前ですっ」
*****
右手には彼女のルームウェア、左手には濡れタオル。
ルームウェアはリビングソファーの背にかけ、スラックスのみをはいていた俺は寝室に向う。
タオルでざっと体を拭き、クローゼットにかけてあるシャツを手に取った。
彼女と同じく白いシャツ。同じ白いシャツでも、彼女のはアイロンのかかったシャツで、俺のは洗いざらしのシャツ。
仕事に行くときはパリっとしたシャツのほうが身の締まる思いがする。が、家にいるときは洗いざらしのものを着たい。そのほうがリラックスできるから。
スラックスも脱ぎ、チノパンに履き替える。
全身さっぱりとし、落ち着いたところで彼女からお呼びがかかった。
「あ、秋斗さんっ」
「どうかした?」
俺は廊下に顔を出し、同じくパウダールームから顔だけ覗かせる彼女に問いかける。
「どうかした、って……。あのっ、私のルームウェアは……!?」
ここにあったはずなのに、って顔。
「ルームウェアは……ここにあるね?」
ソファーにかけていたそれを手に取り眺めながら答える。
「でも、そこに代わりのものがあるでしょう?」
にこりと笑って彼女を見ると、
「ある、には、あります。けど……」
「ちゃんと着てきてね?」
「でも、シャツだけじゃ……」
「大丈夫だよ。体格差があるからね。翠葉ちゃんが着ればチュニックくらいの長さになるんじゃない?」
適当なことを言っては催促する。
「ねぇ、お腹すいた。餓死しちゃう」
「…………もうっっっ」
ピシャリ、とパウダールームのドアを閉められた。
俺はこみ上げる笑いをどうにも堪えきれず、肩を震わせ笑っていた。
数分後、彼女がまたひょっこりと顔を出す。
「あの……これ、すごく丈が短くて、チュニックとは言えない気がするんですけど……」
しどろもどろに言う。
彼女は滅多にミニスカートなんてはかないし、膝上丈のものを着るときには必ずレギンスを合わせる。そんな彼女が“短い”というのだから膝上何センチなんだろうか? と想像する。
「何? 迎えに来てほしいの?」
相変わらず、リビングとパウダールーム、という距離で会話する。
「迎えに行ってもいいけど、その場で……そこで食べちゃうかもよ?」
言うと、慌てて出てきた。
シャツの裾をきゅっと握っては下へ伸ばそうと、一生懸命引張る――が、シャツは綿100パーセント。当たり前のことながら伸びることはない。
丈はお尻をすっぽりと隠し、ショーツが見えないくらいの長さ。つまり、俺にとってはチラリズムがなんとも言えない丈で、彼女にとっては“異常な短さ”を誇る丈。
俺はシャツの裾から伸びる、きれいな脚を舐めるように見ていた。
肩幅が全く合わないシャツは、肩を落とした状態で着られていて、そのだぼっとした感じがたまらなくかわいい。少し動くだけでずりっと肩を落ちそうになるのとか、袖からのぞく指先だとか。
きちんと着ることのできない白いシャツの胸元には、今朝つけたばかりのキスマークが映える。
俺の視線が一点に集中していることに気付いた彼女は、両手で襟元をあわせた。その分、シャツの丈が少し上に上がり、薄いピンク色のショーツがチラリと見える。
お風呂に入ると必ず髪の毛を一番に洗う彼女は、いつもの要領で今もそうしてしまったのだろう。濡れた髪の水分をシャツがぐんぐん吸い込み、あっという間にシャツは濡れ、肌に貼りついた。
薄い生地のシャツが濡れると、肌やブラジャーがきれいに透ける。
何も計算せずに男を煽れるってすごい才能だと思う。
彼女に会うまでずっと、妖艶な女ばかりを相手にしていたからか、彼女の清純さは時を経ても変わらず新鮮に思える。
もう少し大胆になってくれても構わない、とも思うけど、もうしばらくこのままでいいかな、とか。そんなふうに思う程度には――。
廊下を歩き、一歩一歩俺に近づく彼女に手を伸ばす。手に触れた彼女をしっかり掴み抱き寄せた。
「男物の白シャツ着てる姿ってすんごいそそる」
彼女を抱きしめ耳元で囁く。
慣れない格好というよりは、“恥ずかしい格好”と認識しているであろう彼女にとって、その囁きは爆弾のようなものだった。
白い肌が一気にピンク色に染まる。それは顔だけにおさまらず、耳や首、胸もとまでに及んだ。
この状態でベッド、というのはちょっともったいない。ダイニングテーブルかリビングのソファー……。
俺的希望は“食べる”のならダイニングのテーブル、といきたいところだけど、彼女にはハードルが高い気がする。
だから、リビングのソファーで妥協。
彼女はリビングを通過して寝室に行くのだと思っていたのだろう。ところが、俺がリビングで足をとめたものだから不思議そうな顔をする。
「たまには寝室以外っていうのもアリじゃない?」
「え?」
「ここで、ソファーでしよ?」
彼女はフリーズした。
まぁ、当然ったら当然。今まで、ベッド以外でしたことないからね。
たまにはシチュエーションを変えてみませんか? って提案。提案なんて言っても、俺的にはすでに決定事項。
彼女の手を引きソファーの前までくると、俺はソファーに座り、彼女には自分に跨るように指示をする。
「えっ!?」
彼女は驚きよりも抵抗の色を見せた。
「早く、来て?」
掴んだ手を放さず引き寄せる。けれど、次の行動には移ってくれそうにない。
俺は半ば強制的に彼女を抱え上げ、自分の膝に座らせた。
彼女は、今にも蒸発してしまいそうなくらい、顔を赤くする。
膝に跨る彼女はいつもより高い位置にいて、俺は下から見上げる形になる。そんなことすらが新鮮な光景で、彼女がどんなに下を向いて顔を隠そうとしても、何の効力もない。
下から見上げては、かわいい唇をつまみ食い。
シャツの裾から手を忍ばせ、背から腰への曲線を堪能する。俺に跨らせた時点でシャツに隠れいていたショーツは露になっている。シャツのボタンを上からひとつずつはずしていくと、彼女の正面にいる俺にしか見えない下着姿になった。
ショーツとセットの淡いピンクのブラジャーが彼女の可憐さをより一層引き立てる。
なのに、彼女は今俺に跨っているのだ。可憐な雰囲気はそのままに。
ギャップがもたらす効果は意外と大きい。
俺は彼女の背に手を回し、ブラジャーのホックを外す。すると、拘束のとけた胸元から形のいい豊かな胸が重力のままに姿を現した。
シャツは羽織ったまま前だけがはだけ、ブラジャーもホックを外しただけでそこに留まっている。この中途半端さがむしょうにたまらない。
こんな状態でも彼女の姿勢はとてもいい。まるで、騎乗してるかのように背筋をピンと伸ばしている。
本当は俺に全体重を預け、腕を首に回してくれたりとかしてほしいんだけど……。
彼女はバランスを保つ程度に、俺の肩に手を乗せているだけ。でも、この状態だからこそできることもある。
俺は彼女の肌に唇を寄せ、無我夢中で吸い付いた。
唇をつけて離すたびに、彼女の肌には赤い花びらが散っていく。花びらのように見えるそれのバランスを考えながら、ひたすらに吸い付いた。
途中、自分の体を見た彼女が驚きの声をあげたけど、
「心行くまで食べさせてくれるんでしょ?」
言うと、抵抗せずに口を噤む。次に口を開けたときには甘い吐息を聞かせてくれた。
2012/04/15(改稿:2012/10/16)
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